先代馬生2010年09月12日



      秋口になって、お酒がおいしくなりだしますと、
      どうしても先代馬生が聴きたくなります。
      あす祥月命日。


十代目 金原亭馬生2010年05月22日



新刊が出ました。
ちょうどわたしの上京と入れ違いに鬼籍に入られたので、
リアルタイムで高座に接することはできませんでした。
でも残された音源を聴けば聴くほど、鞍馬の出囃子が終わった後、
「ぇーっ」と、ごくふうわりとまくらに入る語り口、
「自己顕示欲」を隠し通した粋と張りを見習いたくなる師匠です。
すれ違いざまに斬られてるけど、いつ抜いたのか分からない、
いつの間に斬られたのか分からない、そして三年後に
突然、あっと言って死ぬ…そんな剣の達人みたいな噺家だろうと思います。
最後の江戸前。読むそばから、うまい酒が飲みたくなる。
いい本に仕上がってました。

いよっ、矢来町!2009年10月01日



きょう10月1日は、志ん朝の命日。
平成13年だから、もう8年になりますか。
20代前半から30半ばまで、短い間だったが、
至福の時を過ごせたことに感謝したい。

漱石が『三四郎』で、三代目小さんを指して、
「彼と時を同じうして生きてゐる我々は大変な仕合せである」
と言っているのは、まさに同感。

さて、今宵は『唐茄子屋政談』を聴きながら一杯。
(写真は『別冊 太陽99号』より)

傾城に誠なしとは誰が言うた2009年08月10日

 新吉原三浦屋抱え、二代目高尾太夫。身体と同じ重さだけの小判を積んで伊達綱宗に身請けをされたが、島田重三郎に操を立て、隅田川の中州で綱宗に逆さ吊りで斬り殺されたという仙台高尾。
 箱崎界隈を散歩中に、この高尾太夫を祀る稲荷社を見つけました。
 頭痛、ノイローゼ、薄髪にご利益があるとか。
 虚実ないまぜ、なんでもありの江戸の信仰心ですね。三ノ輪浄閑寺の「新吉原総霊塔」の陰(そして実)のイメージと対をなすものだと思いました。
 落語「反魂香」、歌舞伎「伽羅先代萩」に登場するのはこの高尾。「君はいま駒形あたりほととぎす」と詠んだのも彼女です。
「傾城に誠なしとは誰が言うた」で下げるのは紺屋高尾。仙台高尾の後輩になります。
 同じ傾城でも喜瀬川やら品川のお染なんかになると、「傾城の恋はまことの恋ならで 金もってこいが本のこいなり」と、すさまじいものになりますが…